入れ歯は正式には有床義歯といい、大別すると総入れ歯(総義歯)と部分入れ歯(局部床義歯)の2種類に分かれますが、ここでは局部床義歯についてのお話を致しましょう。
ちなみに、局部床義歯とは一本だけの入れ歯の方から、一本だけが自分の歯という方までの全ての場合を指します。ですから、奥歯がなく前歯のある方や前歯がなく奥歯のある方、片側だけが入れ歯の方や両側共入れ歯の方、小さな入れ歯を入れておられる方から大きな入れ歯をお使いの方まで、局部床義歯の患者さんには、さまざまなケースが考えられるわけです。
この局部床義歯が総義歯と大きく異なる点は、前述のとおり残存歯があるということであり、それらの何本かには、バネのような維持装置がついているという点です。そして、歯科医師はその設計にあたり、まずどの歯に維持を求めるかを考えるわけですが、これは入れ歯にかかる力を想定した力学的計算から算出されるものでもありますし、また患者さんの装着感なども考慮に入れなくてはなりません。そうして出来上がったた部分入れ歯を皆さんにお使い頂くわけですが、入れ歯というものは他のものとは違い、お口に入ったその瞬間から何でも食べられるというようなものではありません。義手、義足、義歯・・・みな同じで、これには使いこなせるようになるためのリハビリテーションが必要になってきます。
この局部床義歯をお使い頂く上において最も気をつけていて頂かなければならない箇所は、その維持装置のかかっている歯です。この局部床義歯というものは歯と粘膜の両方でその力を支える歯牙粘膜負担という構造になっているため、装置のかかってる歯が入れ歯を支える大きな役割を担っており、そこにはかなりの負担がかかってきます。その上、装置のせいでその歯には汚れが残りやすく、不潔にもなりやすいのです。ですから、できれば毎食後、少なくとも就寝前には必ず入れ歯を外し、その入れ歯をきれいに洗ってやると共に、残っている歯、特に装置のかかっている歯を丁寧にブラッシングしてやる必要があるわけです。
また、入れ歯をお口に入れたままでは、決しておやすみにならないで下さい。粘膜は押さえつけられたまま、歯は負担をかけられたまま、尚且つ口腔内を不潔にしたままの状態で寝ていることになるからです。そして、入れ歯には乾燥が大敵ですので、何かの容器に水を張り、その中に浸けておやすみ頂きたいと思います。(入れ歯洗浄剤に浸けて頂くのは、2~3日に一回程度でいいと思います。)