総入れ歯の大家とされる先生でも、患者様のお口の中の
型を取る時に、上アゴと下アゴを別々に行い、最後に上下を合わせているのが現状です。
現在でもこの方法が主流ですが、この方法では、上下の入れ歯がうまく噛み合わないのです。
例えば、ホタテ貝やハマグリなどの貝殻を思い浮かべてください。
もともと2枚1組であり、他の貝殻と組み合わせるとちぐはぐしてしまうのは無理もありません。
総入れ歯も同様で、“上下別々に型取りするより、上下セットで型取りすることで、
噛み合わせの良い、お口に合う総義歯がつくれる”というのが
「上下顎同時印象法」の基本となる考え方です。
ただこの考えはあくまで基本的なことで、上下セットで型取りを行うことだけが「上下顎同時印象法」の真髄ではありません。例えば私たちが食事をするとき、お口の中の筋肉がどのように働いているか、ちょっと想像してみてください。つばを飲み込むとわかりやすいと思います。当院の総入れ歯はこの「飲み込む」ときの口内の動きまで、考えて作られています。
つばを飲み込む状態なんてどうやって型取りをするのだろう? と思われるでしょうが「上下顎同時印象法」では型取りの最中につばを飲んでもらいます。これは、上下別々で型取りをしていた従来の方法では絶対に不可能です。
個人トレーを使用し、シリコーン印象材で上下の印象、上下の咬み合わせ、機能した状態での舌、口唇、頬の形態、口腔周囲の筋肉の型取りを行います。
その時に嚥下してもらい、嚥下時の筋肉の動きの型取りも同時に行います。
以上の印象がとれたらフェイスボウトランスファーを行います。
正確な機能的な状態が再現された印象です。口唇の形、頬粘膜の形、周囲筋の状態が分かります。
咬合器に付着して義歯を完成させます。
完成した義歯です。
イボカップシステム(加熱加圧精密重合レジン)は生体機能的補綴物システムにより製作を行っていくことで、上下同時印象法によって精密に採取できた型を誤差を最小限に抑える製作の方法です。
お口を閉じて型取り(閉口機能印象)を行いますので口腔内の状態がより精密に型に写し取られ、お口にフィットした入れ歯を製作することが出来るようになりました。
重合時のレジン収縮を加圧補充するため、高い適合性がある
衝撃に強く、臭いが付きにくく変色しにくい
アレルギーの原因となりうる固まりきらないプラスチック樹脂を飛躍的に少なくすることができるため、高強度・高密度であり、またアレルギーを引き起こすリスクを最小限に抑えることができる
一般的に行なわれている義歯の成形方法ではこのプラスチック(レジン)の収縮が補正されないまま義歯が出来上がってしまいます。その為、変形や内部に肉眼で見えない細かい気泡がたくさん入った多孔質のプラスチックになってしまいます。
従来の義歯の成形方法は多孔質、右は均質な構造の違いが明確に解ります。よって「入れ歯の臭いがしない」「臭くならない義歯」なのです。
生体機能的補綴物システムによる成形方法では、約3トンの圧力によってレジンを填入するため、精密で正確に適合した義歯ができます。
「上下顎同時印象法」により制作する総入れ歯は、お口の中の全ての情報を記録し、正確に再現できるので噛み合わせも良く、外れにくい、自然な着け心地を実現します。材料が良くなっただけで、あとは保険適応の入れ歯とたいして変わらないというわけではありません。保険適応の入れ歯との比較を簡単に下記にご説明いたします。
保険診療の入れ歯 | 上下顎同時印象法 | |
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費用 | 保険適応なので安価(1万円前後)に製作ができるが、国で定められた技術や材料、回数的な制約があるため、満足できる入れ歯を製作することが難しい。 | 100万円~(上下顎)保険適応で製作する入れ歯と違い、最新の技術や知識を用いて治療を行うことができ、満足できる入れ歯を製作しやすい。 |
フィット感 (型取りの精度) |
上下別々の型取りとなるので詳細な噛みあわせの採取が難しく、フィット感を得にくい場合がある。 | 上下同時に型を取ることで、歯ぐきの状態だけではなく、舌の状態、お口の周りの筋肉の状態などを忠実に再現する型取りが可能になり、フィット感を得やすい。 |
痛みの有無 | 型取りの時点で誤差が出やすく、またそのため噛むことで入れ歯がずれ、そのずれの動きによって歯ぐきに痛みを感じやすい。 | 忠実にお口の状態を再現する型取りを行うので、誤差が少なく入れ歯がずれにくい。そのため、歯ぐきの痛みを生じにくい。 |
入れ歯の強度 | 入れ歯を製作する際の素材の密度が高くないものを使用しているので、強度を高くしようとすると厚みが出てしまい、違和感を生じやすい。 | 密度の高い素材を用いるので、同じ厚さでも高い強度を得ることができる。そのため、強度の高い入れ歯でも薄く製作することができ、違和感を生じずらい。 |
衛生面 | 入れ歯を製作する際の素材のきめが荒いので、汚れが付着しやすく、入れ歯特有の臭いが発生しやすい。 | 素材のきめが細かく、汚れが付着しづらい。そのため入れ歯特有の臭いも発生しづらく衛生的に使用できる。 |
保険診療の入れ歯は安価ですが、最低限の機能を果たす一方、自費の入れ歯はより自然な使用感と見た目を追求した仕上がりになっています。費用と保険の入れ歯で迷われている方は以下の比較を参考にご覧ください。
保険診療の入れ歯 | 自費診療の入れ歯 | |
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素材 | 素材はプラスチックです。また、きちんと清掃していないと口臭の原因になります。 | さまざまな素材の入れ歯があります。保険診療の入れ歯よりも清潔な状態を保ちやすいです。 |
装着したときの感覚 | プラスチック製の入れ歯は分厚く、装着時に違和感がある場合があります。 | 薄い素材で作ったものは違和感なく使用することが出来ます。 |
強度 | 壊れやすいです。 | 割れにくく長持ちします。 |
熱の伝わり | 熱が伝わりにくく、食事の際に温度や味覚が感じにくいです。 | 熱が伝わりやすく、自然に近い温度感覚で食事を味わうことが出来ます。 |
審美性 | 自然な歯肉とは似ていないため、プラスチックであることが分かります。 | 見た目がなるべく自然に見えるように作られています。 |